2008年3月8日講演会(新潟市)感想

 そら!

 そら第二波!

 そらー! 英語だと世界で唯一の存在を表す時はTHEなので THE SKY! THE WORLD! Aはいっぱいある中の一個を表すので AN APPLE! いえーい!


 ―――と、ボルテージの急上昇の偽装も完了したところで。
 講演会に行ってまいりましたー。おかえたりまー。今のは、お帰りなさいとただいまのメタモルフォーゼ言語です。発声するともれなく、なんか軽く異星人の気分が味わえると同時に、周囲からまるで異星人を見るよーなうさんくさい視線を浴びることができます。一石二鳥! 一石二鳥! というわけでさあ皆さんご一緒にー。おかえたりまー!
 さて、しつこく嘘つき活動にいそしみつづけるDNDDはおいといて、講演会なんですが。上橋先生の思いとしては「インターネットというのは、事実を曲解させることにおいては随一というか諸刃の剣っぽい道具なので、ネットに載せる場合は講演会の内容は感想程度にとどめ、発言などについて詳しいことは言うてくれるな」といったよーなことのよーです。ですので、本項では主にDNDDの主観的な感想がだらだらと綴られます。ではどうぞー。

 会場であるユニゾンプラザへ到着したのは、12:30でした。始まるのは14:00ですから、自分でもちと早すぎるかなぁとは思いましたが、なんとそれでも2着。すごいファンがいらっしゃるものです。
 驚いた出来事として、「大体DNDD以下の坊ちゃん嬢ちゃんばかりなんだろうなぁー。しょうがない。夢と希望にあふれたしょっぱい平成ベビーアダルト版どもの生気を目の当たりにして、ジェネレーションギャップでも感じてくるかー」と一段階加齢するつもりで参戦したところ、どうみてもDNDDよりいろいろと熟され尽くしたマダムがかなりいらっしゃったということを置いては語れないでしょう。子どもの保護者とかの類(たぐい)ではありません。背後からは「こぉんな機会でもないと、なかなかないわよねぇ〜」という、中年女性に顕著に傾向が現れるといわれているラジオ言語が飛び交っています。え? なにこれ陰謀?

※ラジオ言語とは
 部外者には意味も意図も不明であるが、話題を理解している場合は、なんとなくニュアンスだけで通じ合ってしまう会話のこと。話し言葉は音波、話題はラジオの局にたとえられ、チューニングがあっている場合のみそのコミュニケーションをコミュニケーションとして成立させることができることから、このように言われる。例として、夫婦間の「アレとって」「はいはい」などがあげられる。つまりこの場合、「アレ」についてチューニングがあっている夫婦間では、「アレ」と話すだけでちゃんと理解がなされ、奥さんは新聞紙とかコーヒーとか金棒とか離婚届とかを手元に宅配してくれるというわけである。よって旦那さんは心置きなく、記事に目を通したり芳しい芳香を堪能したりちょんまげ小僧からオニ退治されたりキャバクラもう行きませんと土下座したりできるのである。うそだけどな。丸ごと。

 そして着々と人数が集まり……なんというか集まり続けた結果、入場は13:30からの予定だったものが20分近く繰り上げられるという結果に。いやあなんというか……すさまじいものを感じました。後で耳に挟んだところによると、200人募集のところ、500人近く応募があったそうですね。運良かったんだなぁDNDD。
 そして複数の方は、さも当然と「守り人」シリーズのいずれかを携帯しております。DNDD、間近に「もりびともだち」がいないので、これ程まで多くの方が守り人でつながっている光景は圧巻でした。まあそんな中で、ちょうど上橋先生が壇上に立たれたら真正面に来るだろう(見上げなくても目が合う位置)座席に陣取り、守り人とは全く無関係の文庫本に読みふけったりするわけですけど。にわかファンみたいだなとほくそ笑んだりして、我ながらいい感じです。

 で、14:00。このユニゾンプラザの館長さんだか艦長さんだかが「戦艦ヤマトはかならず宇宙から帰還する! さらばー地球よー(ビブラート)」と一通り盛り上がらせたところで(嘘です)、上橋先生の登場です。
 写真で拝見したとおりのお方でした。全体的に。いやホント。

 数々の土地でフィールドワークに勤しまれていた経歴に恥じず、他者を巻き込むパワーがおありで、話の仕方もお上手です。笑いを交えつつ、2時間近くお話くださいました。土台に先生の生い立ちや経歴、家族背景などを据え、その時々の年齢で感じていた思いや疑問をエピソードに話題を展開し、脱線させては笑いを起こす。雰囲気としてはそんな感じです。雑誌に掲載されたことがある様々な記事(祖母の口伝の逸話について、本に登場する食べ物の描写について、沖縄の“おばぁ”について等)と重複する内容も幾つかあり、それらについては更にバックグラウンドを種明かししていただいたり。ごちそうさまです。
 作家デビューは持ち込みがきっかけであったというのも時代を感じました。今の時代、マンガ原稿以外は持ち込みはあまり歓迎されないんじゃなかろうか? よく文庫ごとに○○大賞、というやつがあったりしますけど、今ではアレも編集者さんではなく「下読み」とかいわれる作家の卵さんというかセミプロというかそういった方がまず「ダメ」と思ったものを弾いてしまわれるんですよね。これだけ本があふれて自家出版もなされる時代です、しょうがないことではあるのですが……作品を弾いた理由として「これは小説とはいえない」とか一文だけ走り書きされたメモが添付される、なんて逸話に触れるたびに、なんだかなぁとは思います。
 また、人生に大きく影響した本についても紹介してくださりました。「ロード・オブ・ザ・リングス」や作家ローズマリー・サドクリフ氏のシリーズについては言うに及ばず、漫画もちらほら。「トーマの心臓」という漫画、これはDNDDも好きです(DNDDは「11人いる!」でこの作家さんを好きになったのですけれど。「ポーの一族」も面白いですよね。昔の漫画はDNDDの性質にフィットするものが多くて重宝させてもらってます)。DNDDは「ブラックジャック」は愛蔵版をすでに全巻そろえています。アニメの黒男は認めねぇ! 手塚息子、親父さんの漫画へのあんたの解釈と作品制作背景は重々承知で言わせてもらうが……俺は認めねぇ!(注:アニメ『ブラックジャック』『ブラックジャック21(トゥウェンティーワン)』の監督は故・手塚治虫のご子息でした)。

 ところで。
 先生は、ご自身が小学校・中学校・高校・大学というプロセスの中で踏んできたそれぞれの思いや疑問を、こうして講演会という形で公表できるまでに咀嚼・整理して、受容していらっしゃるということを感じ取るにつれ、「わあーちゃんと“大人になった”大人の人だー」とDNDDは馬鹿みたいな感想を覚えました。
 先生の体験談に「あるある」と頷くことはDNDD自身多かったですし、聴衆の方の後頭部もふらふら前後屈くりかえしたりしてました。ただし、「あるある」から先へ踏み込んだ方がその中にどれほど存在しているかといわれると、DNDDには、それほど多くないのではないかなぁと思えてしまうからでしょうね……多分、「あるある」のフィーリングと共に感じた満足感で胸いっぱいとなり、そこから進まないこと(自分はどうだったのかとフィードバックしないこと)がおおいんじゃないかと。まあそれでも人生済みますし、DNDDも底抜けのあほですから、こんなこと言える立場ではないのですが。
 DNDD自身も含め、自分が体験したことを本当の意味で自分の財産にできる方というのは、あまり多く無いと思っています。人間は楽するのが好きですから、大概は元も簡単な手法で、財産に見せかけようとする傾向があるので―――財産に「する」よりも「見せかける」ほうが安易ですからね―――つまり、人をダシにして自分をよく見せるのが極めて多いわけです(「先輩」をネタに後輩を蔑み、自尊心を満たしたりするのはありふれた光景といえるでしょう)。上橋先生には、そのような気配を感じることがありませんでした。いい体験です。
 まあ、会ってみたかった方に会えたという喜びで、いつものDNDDの皮肉気質がフィルタリングされてたというような、救いがたいオチが存在する可能性も、なきにしはあらずなんですけどねー。


 ともあれ。15:30までの予定でしたが、20分ほど講話は延長し、それから16:00まで質問タイムとなりました。5分あまりでしたが。質問は、

@「獣の奏者」の続編は出ないのか
Aアニメ「精霊の守り人」にはどれほど関わったのか?(変更された点は先生の公認か? 等)
B元々「本」であったものがアニメやボイスドラマへと多角的に解釈・表現されたゆえに、今後さらに個々人によって多種多様な解釈がなされ、インターネット等に氾濫するだろうことについてどう思われているか

 の3点でした。大まかですが、質問の内容はこんな感じです。

 ううむ。どうしましょ。先生は語る際に「ネットに詳しく乗せてくれるな」と重々念を押されていたわけですし、これもネットですから、どのあたりまでちょろまかせばよいものやら〜と首をひねるわけですよ14回転半ほど。でも回転してる際は弱点とかモロバレなので、気をつけるのはマヨネーズとかだな。あるいは定規の先っちょとか。オーケイハニー、君とは話がしたいんだ、だからちょっくらそいつを手放しちゃくれないか? 知らないかも知れんがね、僕は危険じゃない時のほうが饒舌なんだよ。
 でまあ、ひねるのにもあきたので、やっぱりDNDDの感想を中心に簡単にいこうかなと。ではゴー。

 @の質問ですが。質問そのものについて、まずDNDDは「ん?」と思いました。あれって、「獣の奏者」の物語(あるいは「獣」と「奏者」の物語)だから、あれで完結でいいんじゃないのか? と。どうやらその感覚は的外れでもなかったようで、先生も、「獣」と「奏者」の物語が完結した以上、それ以外の人間関係やお国関係やらの部分を叙述することには、あまり重きを置いていない……といった感じでした。とはいえ、軽く見ているということでもなく―――まあつまり、“タイトルどおりの物語”として考えるのが一番なんじゃないかなーと、そういった感じです。DNDDの受けた印象でしかありませんが。

 Aの質問ですが、それはもうとにかく情熱とかバイタリティーとかあふれんばかりに関わったということが分かりました。足掛け3年(だったかな?)、放送局がNHKと決定する前からのかかわり具合だそうで。とにかく議論を重ねに重ね、変更に変更を加え、とても満足してアニメ化に関わられたようです。原作から変更される部分につきましては、文章→映像と媒体が変更されることを鑑みれば成されて当然である……との見解と共に、当然であるがゆえに根本から逸脱しないで欲しい―――といったような思いがおありになったようです。そりゃそうですよね。「精霊の守り人」の看板をしょってるんです。「ラーメン屋」って看板出てんのにギョーザに本腰をいれてたりされたら客が反乱起こしますよ。
 てか、アニメ見終わってないいち視聴者(DNDD)にとっては致命的な最終話あたりのネタバレを先生ご自身からされたりして、軽くジャブ喰らった気分でした。なんなんでしょうこれ? まさか皆さん、守り人のために衛星第二と契約したり、朝早く起きたり、動画投稿サイト狙いでネットサーフィンしたりしてること前提なんですかこれ?

 そして、あろうことかDNDDが質問したBなんですけど。

 い、痛い痛いいたたたたた、い、石はやめてください石は石投げないで! コラそこのお前、お前の雪だま絶対に石を偽装したやつだろそれ! 大体お前の投球フォームひたすら将来性びんびんに感じる正しさなんだけどってぎゃーああああぁぁぁ球速150q/秒!
 あうー。すいません。でも気になっていたんだもの。幸運の女神が二度と目の前を通り過ぎると思うなだもの。幸運の女神って前髪しか生えてないらしくてそれって掴み損ねたらもう後はないぞってことらしいんだけどセンターヘアーだけたなびかせた女神なんて捕獲しろって言われても尻込みするよなって思うんだもの。あれ? 何の話でしたっけ。
 まあとにかくBですが。まず、物語として世に出た以上、大勢の人が大勢に理解して混ぜ合わせて、そこからまた芽吹いていくのは古来からの宿命といった感じにおっしゃいました。宿命なので、あまり関知するつもりはないと。
 ただし……なんというかDNDDは、そのせりふの前提として、「他人のフンドシで相撲を取るんだったら、心意気的には決定的に原作と決別して欲しい」というようなことをおっしゃったようにも感じます。つまり、作品を自分なりに考えて、そこをあくまで素地として、“(「守り人」に対する)自分の感性”を主に据えて展開するんなら良し。ただし、“(「守り人」に対する)自分の感性”を“(「守り人」を読んだ)自分の感想”と混同し、あたかもその作品の亜流を気取るのはダメ、と。
 マンガで作品にツッコまれるのは自分でも読んで楽しめるのだけれど、二次創作でキャラを気取った小説などにされると見るのも受けつけない……といったようなことを先生がおっしゃられたのは、こういった意味なんじゃないかなーと思います。パクリと、パクリじゃないもの、の違いについてお話されたのかな、と思いました。
 うーん。著作権って、モノ作ったら勝手に適用されるくせに、考えたら難しいんですよね。でも難しいと思えるのは、DNDDが難しく考えているからで、どうして難しく考えるかともうしますと、平たく言えばDNDDが「守り人」において著作権の抜け道を探しているからです。大体、DNDDのよーに「守り人」を二次創作で扱って著作権侵害してるよーなやつが、自己紹介のとこで「DNDDの著作権侵害せんでください」とか言ってるのは、根底からしてちゃんちゃらおかしいわけですし。自分がしてるくせに自分はされたら嫌だからこっちにはするなよーなんて、それこそとんだ恥知らずがやらかす馬鹿なわけで……まあDNDDは、他者へ発売していない(閲覧に金を取ってない)ことと、キャラに対してDNDDが感じた価値観を主に据えて表現すること(だから特に小説のジグロの言動とかがアレなんですが)で、「まあ上橋先生の当座の利益は侵害せず、自分の守り人に関するもちゃもちゃを発信できるから、グレーゾーン扱いかなぁ」と言い訳しているわけですけれど、「言い訳とは、あとからつく嘘のこと」という某小説の言葉とか思い出すと、もううめくしかありません。
 あの。これ、あくまでDNDDの感想、あほの妄言ですからね。真に受けないですよね? DNDDは別に、同人誌活動に反対しているわけではありませんし、自費出版で商売している方々を批難しているわけでもありません。それぞれお考えになった上での行動でしょうし、このご時勢、元から同人誌活動が展開されることによる利益を主眼にすえた漫画アニメも登場するくらいですから、ホント持ちつ持たれつ、な関係なんですよ、きっと。DNDDも昔やらかしたことがありますし、購入したこともありますしね。どっちもどっちなんだと思います。DNDDの好きな商業作家さんには、「同人誌はばんばん作ってくれて結構です。ただ、自分も見たいので、送料とか代金は払いますから、うちまで送ってくれるとありがたいです」と明言されている方もいらっしゃいますし。人それぞれのものなんだと思います。ええ。

 にしても、最後うっかり先生に向けて「僕がDNDDです以前からネット上でのありがたい言葉のかずかず痛み入っております!」とか叫びかけてすんでで堪えたので、「ありがとうございます」の文頭にみょーな沈黙が入ってしまいました。

 とまれ、講演会はこーいった感じで幕を閉じたのでしたー。当たり前ですが、手形や足型はもらえていません。ちゃんちゃん。









 ◎恥道中◎

 そのはじまりは何だったとかと考えてみれば、なんのことはなく、DNDDが新潟に行くと知った身内の発した一言でした。

  「納豆かってきて」

   ( ゜Д゜)!?


 わけが分からなかったDNDDを誰が責められよう?
 納豆? なにゆえ新潟くんだりまでいって納豆を買わねばならないのか? なんだ新手の嫌がらせはそういった趣向かそういった趣向なのか? 分かった。いいだろう、僕が屈服したとあざ笑うがよい。ただし間違えるな、未来の敗者は貴様だ。歴史は過ちを見過ごさないであろう。
 まあ嘘はおいといて話を聞くと、新潟にある大力納豆とかいう納豆には、こうじが入っていて非常においしいらしいんです。んで、前からちょくちょくと、機会があって新潟を訪ねるごとに購入していたとかで、今回ちょーどよいから買ってきてたもれ、とのことでした。

  「どこで売ってるんですか? それ」
  「新潟」

   ( ゜Д゜)

  「新潟のどこ?」
  「店」

   (  Д ) ゜ ゜

 何でだろう何で確認するごとに証言がうたがわしくなっていくんだろう。陪審員はもちろん毛筋ひとつも納得することなく、この証言の扱いについて異議が申し立てられるわけですが、検事は「蒙昧(もうまい)とは現実を記憶することによって生じる誤謬(ごびゅう)であるゆえに逆に信憑性がある」とか言い出すし、収拾がつきません。もちろん頭の中の。

  「前に買ったレシートか何かありますか?」
  「はい」

 ※出されたレシート:昭和62年 月28日


 何でだろう何で(以下略)。
 提出された物的証拠はその納豆が過去に存在していたことを確認するという意味合いでしか役に立たなかったものの、反証の提出に陪審員一同は丸め込まざるをえず、とりあえずDNDDは口約束で納豆を買ってくることを契約したのでした。



 んで。行きはなんの滞りも無く出発しました。
 カバンに詰め込んだ文庫本を着々と消費しつつ新潟へ。新幹線です。新幹線っていったいいつまで新なんだ、いつまで新とか若ぶって後進に道を譲らないつもりなんだとずっと考えさせられている新幹線です。指定席でほぼ席がらがらなのに、何でかDNDDの周りには喪服と思しき衣装に身を包んだ中年男女がみっしりしていたことに違和感を覚えなかったといえば嘘になりますが、覚えなかったといわなければいいだけの話なので言わないでおきましょう。

 でもって着きました新潟! さっぱりと晴れでした。天気のことなんか分かりませんが、恐らく、守り人ファンの熱気が気圧を調整してくれたのでしょう。雪なんて一片たりと見当たりません。雪国の冬季を笑い飛ばすような快晴です。笑うな! 飛ばすな! (何いってんの?)
 とりあえず、るるぶでチェックしていたお店に行くことにします。場所だけ確認し、買うのは講演の後です。納豆はどうせ駅にあるだろうし、るるぶに載っていた、駅付近の洋菓子屋にレッツらゴー。

 迷いました。

 罠ですね間違いなく。くふふ、やるじゃないか鬼畜米兵めが。
 いや軽く戦時中まで脳内で時間逆行してる場合ではない。駅の裏、本屋しか入っていないひたすら閑散としたこのビルの近くにあるんじゃないのか、このプリン屋は(るるぶにはプリンの写真が写っていたのですが、プリンだけ売ってはいないと思います)。何故だ。何故DNDDを拒む。あれか。たたりか。昔ケーキバイキングで手のひら大サイズケーキ14個+ホテルデザート(シュークリームやゼリーなど)全種コンプリート完食とかしたたたりか。そうなのか。
 どうやらたたりだったらしく、11:30くらいまで迷いつくしました。地上はともかくとして、なんでこの駅の歩道橋、こんな環状に繋がってるんですか? 色分けもされていないし、つくりも似たような感じです。ぶつぶつ。恐らくDNDDより年寄りであろう建築にまで当り散らしはじめるDNDDの貧しい心。泣いてなんかないぞ! いるもんか! うう。
 もうぐったりにぐったりをかさね、「まあいいや、るるぶのこの駅西区とかにあるらしいクレープ屋に行こう」と足を引きずるように向かってみれば、たどり着いたのは中央区と東区だし。手元には地図があるというのに、これは一体どうしたことか。何らかの闇の画策が蠢いているに違いありません。おそらくるるぶの地図も、昨日の夜あたりにそいつらに買収されたのでしょう。いいんだ―――いくらだったのかなんて聞かないさ……裏切りの報酬は値段になんざ変えられない、家族だったんだろう? 分かってる、相棒。
 まあ置き去りにしといて。プリン屋の確認どころか、当然昼食時に行こうと思っていたるるぶ掲載店にも行けず、適当にごはんを済ませ、DNDDは早めにバスに乗りました。事前にインターネットで調べておいたところによると、駅から出発するバスを使う場合、ユニゾンプラザ前に下車からだと歩いて1分、なにがしとかいう高校前から下車で歩いて10分だそーです。ふふふ、完璧だぜ! ユニゾンプラザ前で降りればいいんだな! 意気揚々とした心を胸に席に鎮座していると、

  「次は、南高校前です」

 ユニゾンプラザはっ!?
 乗り間違えたのか乗り間違えたというのか10分歩けということなのか!? 待て待てなにを10分程度でためらっている。ここで下車すれば少なくとも10分歩けばつくという目安があるのだぞ。ここを過ごしたら見ず知らずのバス停留所からスタートだぞ分かってるのか―――!
 DNDDはお外に出てもインドア派。こーいった外出シチュエーションにものすごい弱いのです。マヨネーズとか定規の先っちょなんてメじゃありません。ひいいぃぃぃと挙動不審になりかけながら固まっていると、なんかこの高校を過ぎてから2つめくらいの停留所で勝手にユニゾンプラザに着いてしまいました。やった! 冷徹な鬼畜米兵もひたむきなその姿に凍りついた心を溶かされたに違いありません。

 そして講演会でーす。詳細は先程の通り。

 で、またしても歩いたりバスに乗ったりしつつ、老夫婦に席譲りながら「人の為の善って書いて偽善なんだよなー」とか心の中で道徳を踏み砕くせりふを吐いたりして帰宅の途につくわけですけど。駅に着いた時点で、新幹線の発車までおおよそ1時間半の余裕がありました。納豆を買って、例のプリンを買って、昼飯に行き損ねた例の店で夕食をとることも不可能ではありません。ふふふふふ、ちょっと得意がります。そして、駅の中にある、COCOLO万代とかいう総菜屋に向かいました。

  DNDD「すいません、納豆探してるんですが」
  店員(笑顔)「あ。あちらにございます」
  DNDD「力石納豆とかいう」
  定員(笑顔)「そりゃないわ」

   (  Д ) ゜ ゜

 なに力石だけ納豆商品からハブにしてんだこの野郎!?
 あれかこれは!? なんかイベントがあるごとにやたらめったらクローズアップされる割にブームが去れば社会の暗部らしくポイっと捨てられる代表格のイジメという現象か(代表格以外の例:カリスマ美容師、冬季五輪のカーリング競技、この間の例で言うとハンドボール競技など)!? そのイジメとやらが人間社会のみならず納豆社会にまで波及しているとかそういう―――!?
 まあ、事細かに嘘ではあるんですけど。どうやら話を聞くと、駅から10分ほど歩いた先にあるアルタとかいうビルの地下か、伊勢丹というビルの地下にならあるかもしれないとか。10分……往復+探す時間で、30分くらいか。プリンと夕食はまだオーケイだろう。というわけで、徒歩でアルタとやらに向かいます。

 迷いました。

 何なんでしょうこの罠の陰湿さは。いったん人を安心させといて、そのゆるんだ心内を粉砕せんがために考案されたという、伝説の殺法真拳「絶望」とかそんなのでしょうか。るるぶよ、君は家族と安寧(あんねい)を謳歌(おうか)しているのだろうか? 今の俺を見れば君はわらうだろう。見限られた敗者の末路だと。だがそれでも、俺は―――弱い俺が君を恨むかもしれないその時、そのような妄言などに惑わされることのない磐石(ばんじゃく)の幸福を、君が手に入れていることを祈る。
 まあとりあえず、どんだけか動き回った挙句、アルタとやらに到着。地下へと走ります。うおおおおお!
 納豆見つけた! 納豆! 力石! いたーーー!!

  こ う じ が 入 っ て な い !

 ちょ……店員さん、店員さーん!

  店員「はーい」
  DNDD「あの、こうじがはいった力石納豆はありませんか」
  店員「力石納豆はこちらになりますが……」
  DNDD「入ってないですよね、これ。こうじ」
  店員「表示されていませんからねぇ」
  DNDD「偽装表示の可能性については?」
  店員「(素敵な苦笑い)」

 初対面の方にツッコミという過剰な期待をかけてしまったことに反省しつつ話を聞くと、どうやらもう一方の伊勢丹とやらの地下へ行くしかないようです。どうやって行けばいいんですか?

 店員「いったんこの建物の2階に上がっていただいて、そこから屋外へ出て、バスターミナルのある方向の歩道橋を渡ったビルの地下1階になります」

 何語?
 モロミッチャ言語とか多分そんなんだと思うんですが、残念ながらDNDDは日本育ちなので、そのような文化に通じていません。とりあえず理解できなくもなかった「2階」に行ってみますと、こちらの歩行活動を誘うように、屋外へ向けて歩道橋らしきものが伸びています。行くしか! 駆け抜けるDNDD! だー!

 保険会社総合ビル(っぽいとこ)につきました。

 おのれ俺め。いつの間に次元を超える能力を有しやがったんだこんちきしょう。まだ超ひも理論もよく分かってない分際で。
 あ。超ひも理論は実在の物理理論でして、結構おもしろいんですよ。オススメします。10のマイナス33乗と言うちっさすぎるにも程がある世界に存在する10次元の「ひも」の存在を定義することによって成立した、相対性理論と量子論の間の矛盾をすり合わせようとした理論なんですけど。これって、パラレルワールドの存在をにおわせる理論でもあるんです。興味をもたれた方はぜひ。
 ていうかパラレルワールドとかはおいとくとして、当面のDNDDが求める進化は脱皮であって時空飛行ではない。ビル地図見ても地下ないし、こりゃ本格的に迷いました。もうここまできたら「次はなにが来るんだ。ラスボスか。ツノ付きか? ツノ付きなんだろうな?」とか奇妙な腹の座り具合です。がしがしと頭をかいてスタンダードな「困ったポーズ」をとっていると、ふと耳元の手首から聞こえてくるのは腕時計の秒針の音。

  DNDD「(チラ見。)」

 新幹線発車まであと38分。

  DNDD「(無音の戦慄)」

 うあっ、DNDDとしたことがピンーチ! 買い物どころか家への帰宅というミッションすらコンプリートできない可能性が現実味を帯びてきました。道に迷ったやつが、店どころか駅までつけないのは矛盾のない帰結というもの。そして相乗された不安に追い詰められるまま、すこぶる気まぐれに、てけてけと駆け足で走り回ります。よくわからないので、曲がり角を4回ぐらい曲がったような気がします(なんでよく分からないのに曲がるのと聞かれれば、動き回った方が立ち止まるより不安じゃないからという非文明人的な理由がおくびもなく出てくるあたりがDNDDです)。明らかに混迷を深めること確定の、迷いっ子スタイル本領発揮。と。唐突に。

  目 の 前 に 伊 勢 丹 (豪華) 。

 なんだこれ。すごく釈然としませんよこの展開。県境を越えた初めてのひとりっこお出かけだというのに、穴あいた服とか堂々と着用してったからご先祖様が遠まわしに呪ってきてるんでしょうか。あるいはDVD感想の時に間違えて伊勢丹とか書いたからでしょうか。あやまったじゃん! すいませんでしたって建前的にあやまったじゃん、偽装表示がばれた時の会社役員一同みたいに!
 とにもかくにも、地下へむかって走りこみます。どぉりゃあああああぁぁ! 勝てる! 今のDNDDならメジロドーベルにも勝てる! 特に容姿的なアレで!

※メジロドーベルとは
 なかなか強かった元・競争馬(競馬の馬のこと)だが、女の子のくせに、歯ぐきむき出しどころの騒ぎではないものすごいツラ構えをして走る。これを愛嬌があると言い切れるのは対象が動物であるからであって、人間がさらしたらまず間違いなく「醜態」と烙印を押される可能性が92パーセント。「醜態でない」とする8パーセントの内訳は、自分より格下の容姿の女に向けて女が発する「かわいいー♪」のタイプが7パーセントで、残りはマニアックな趣味人。ところで競馬の馬といえば、やはり美しさと強さで伝説の尾花栗毛(おばなくりげ)、トウショウファルコを除いては語れないと思うわけだが(以下略)

 とまあヒューマンでありながら馬に一歩近い状態でアンダーグラウンドへ駆け込んだDNDDの目の前には、整然と陳列された力石納豆が! やった! 神様は、神様を信じていない人間ですら見捨てていなかった! 嘘だけどな! あまねく全てのめぐり合わせは運という実力の内なので、もれなくDNDDが最トップのはず! 凄いね、もう来年くらいには支配できるね世界とか次元とか宇宙とか! 嘘だけどな(リターン)!
 それで納豆抱えて、高級売店らしく遅い(換言:丁寧な)手付きのレジも済ませ、階段のぼろうとするわけですよ残存パゥアをひねり出しつつ。時間が時間だけに、それなりに買い物してる方もいらっしゃいます。そうなると、ふとした拍子に、するっと耳にすべりこんでくる、ひと様の会話とかがあるわけです。

  「10万円だよね?」
  「そうね、もう●時だしね」

 !?

 振り向くと、熟女セレブまで色々とあと少しといった感じの女性と、それに手を引かれる白タイツの子供がひとり。10万円? 10万円って、日本国における貨幣単位と数字であって、時間に換算できるはずはないと「時は金なり」の格言も申しているわけで。モロミッチャ言語の再来でしょうか?
 とか言ってる場合でなく、本当に列車発車まで30分切ってます迷子のくせに。正確には27分前! 馬鹿が!
 ダッシュですよそりゃあもう自転車とか追い抜くくらいの。行けDNDD! もうなんか光とかなれ! 空気摩擦で引火しろ(現代版かちかち山)! 脳裏には爆風スランプの「はっしっるーっはっしっるー、おれーたーちー♪」とか流れ出すくらいの危機レベルです。道とか聞いてみると、意外に近いことが判明! 多分、美形の神様が微笑んでくれたに違いありません。見た目ちゃらちゃらしていない美形こそ、ここ一番で頼りがいがあるという捏造法則にしたがって、ことごとくそういった雰囲気の巻き黒毛の女性とかコンビニ店員に道を尋ねたんですけど。

 このようにして、美形の神様の恩恵をおこぼれちっくに頂戴して、DNDDはなんとか駅まで戻ることが出来ました! ぎりっぎり! もちろんダメっ子は駆け込み乗車! だー! 外国映画だったら多分この直後に列車の後方に爆弾とか投げ込まれてボーンとかなってしまってこっちまで誘爆する可能性ごと後部車両を切り離しに行かなくてはならない運命の元にあると思うんですよ主人公なら。しかしここは外国でもなければDNDDも主人公ではないので、なんにも起こりませんでした。というか日本人って顔立ちが淡泊なので、モノが爆発するような派手なアクションよりも、ハートのせめぎあう内面劇をあぶり出すのほうがよほど素晴らしい迫力が出るとDNDDは常々思っていて、その点でいえば黒澤明監督は(以下略)。

 しかしこうして振り返ってみると、瀬戸際までピンチに駆け込み乗車だった決め手は、何を隠そう、

  発 車 時 間 を 5 分 遅 く 間 違 え て い た せ い で は な か ろ う か と。(ぅわあ……)

 いやいや後ろは振り向かないぞー! DNDDは常に前向きに明日を見て生きてるからなー! あれ? これって今日に足つけて生きてないってこと? そんなはずはないさ。だって今回も合言葉「大丈夫、昼にどうなっても夜はおふとんで寝てるよ」で乗り切ったしね! オーライオーライ、結果も発車もオーライ!(なに言ってんの?)

 で、こいつが戦利品でーす。納豆。



 たしかに、腐った大豆の隙間で、こうじがつぶつぶしていました。つぶつぶなんて。ぷっちょでもないくせに。

 そして、ちょっと納得いかない駅弁がこれ。



 いや真ん中のタマゴは比較対象のために置いたヤツで、アンドリン君の生き写しが見えるのは気のせいです。
 そして何を比較対照するのかというと、大きさ。おにぎりにしたら、せいぜい2個にしかならない程度の量の釜飯が2個セット。これで1200円は高いんじゃないかなぁ……とか。味は悪くなかったんですけど。チェーン店の牛丼屋の牛丼一杯のおよそ8倍の美味しさかといわれると、思いあぐねてしまうのも事実。DNDD、心どころか舌からして貧乏なんでしょーか?
 そんでもってさらに自分みやげ。



 トロガイ師、酒がありますぜ! 酒の肴(さかな)は俗世の恥で充分だろう? さ、一献(いっこん)。
 酒を「献」で数えだした先代のセンスに尊敬の念を抱いてやまない。

 ええと。
 ……まあ、そのはじまりは何だったとかと考えてみれば、なんのことはなく、身内の発した一言だったのですけれど。
 一言から始まったにしては、随分と割に合わない疲労をしょいこんだんじゃないかとか思いもしたりする、そんな一日でした。